野球、サッカー、ラグビー、また、国内リーグ、海外リーグ、国際大会などスポーツの競技団体や大会は数多く存在します。そしてその大半が何らかの形で企業からの協賛を募っています。こうしたスポーツコンテンツに協賛する企業の目的が、以前と比べて大きく様変わりしています。以下、今日の企業がスポーツ協賛を通じて目指すものの潮流について解説していきます。
従来型のスポーツ協賛
広告露出型
従来のスポーツ協賛の主流は、社名や商品名、企業ロゴやブランドロゴなどを試合会場内に掲出することが協賛メリットの主軸とされていました。上位協賛社から順に会場内の目立つところに看板等を設置することが一般的であり、特にテレビ中継の際に映り込みやすい場所に設置することで、試合会場に来た人の何倍もいるであろうテレビ視聴者の目に触れることに重きが置かれていました。 そのため、テレビ中継の有無、特に地上波全国ネットでの中継があるかどうかで協賛の価値に大きな差が生じ、協賛金額の設定にも多大な影響を与えていました。また、広告業界では、これらの看板等のテレビをはじめとするマスメディアでの露出量を広告費として換算し、マス広告との比較を行うなどしてスポーツ協賛の価値指標とすることも一般的でした。
露出効果への疑問
しかし、広告主がメディアに求める広告価値が露出を稼ぐことだけにとどまらなくなっている昨今、スポーツ協賛においても試合会場における露出にどれほどの効果があるのかについての見解に変化が見られています。特に大規模なスポーツ大会などは協賛金額も高額であり、協賛社の大半はいわゆる大手広告主が中心です。そうした大手広告主になればなおさら、今さら試合会場に社名やブランド名の露出があること自体に大きな効果は見いだせないということも当然の流れと言えます。 このような背景を踏まえ、スポーツ協賛においても広告主となりうる企業が求める協賛の対価は会場での広告露出にとどまらない、より実態の伴う権益にシフトしてきています。
[Tips]社名や商品名、企業ロゴやブランドロゴなどを試合会場内で掲出することが協賛対価の基準となることへの疑問
現在のスポーツ協賛の潮流
現在、広告主企業がスポーツ協賛に求める目的は露出機会の確保にとどまらない形に進化しており、大別すると以下の3パターンに分類されます。
事業共創型
権利元である競技団体の運営に関わる事業について業務委託を受けることを権益とする、あるいは競技団体と共に新たな事業を構築し、収益の獲得を目的とするパターンです。注目度の高いスポーツ大会の運営に協賛社自身の事業領域に関わる分野で参画することで直接的な収益を得られると共に、その事業領域における自社のブランディングにつながるパブリシティ効果も期待できる取り組みとなります。自社の事業領域に基づく協賛ですので、協賛社にとって負担やリスクが少なく、リターンの見通しもつけやすい形態となり、協賛時の社内コンセンサスが得やすいパターンとも言えます。 競技団体にとっても、元々必要となるコストを協賛社が負担することで収益を獲得できる、あるいは新たな収益源をその領域に長けた協賛社と共に構築できるという点がメリットとなります。一方で、特定の事業領域におけるコストの価格競争力を弱める可能性もあるため、競技団体はそれに見合う協賛条件を求めることになります。
[Tips]権益としての業務受注や、事業開発を通じた収益化を図ることを目的とする事業共創型
社会貢献型
2023年1月の法改正により、企業はサステナビリティ情報といわれる持続可能な社会の実現に向けた取り組みに関する企業情報の開示が義務付けられました。具体的には、環境負荷の削減・社会的課題の解決・経済活動を通じた地域社会への貢献に関する情報の開示です。このような社会的背景もあり、特に公共性の高い事業を行う大企業を中心に何らかの社会貢献事業を具体的に推進することが求められています。スポーツには教育・健康に寄与するなどといった公共財としての側面もあるため、このような背景を踏まえて社会貢献のためにスポーツ協賛を行うというパターンが増えています。このパターンが社会貢献型です。
社会貢献型の協賛社は、例えば次世代支援、健康増進など、企業としての社会貢献の方向性をミッションやパーパスとして掲げているケースが多く、その方向性の体現がスポーツ協賛の目的となります。そして、そうした方向性に沿ったアクティベーションを競技団体と共に推進することで、スポーツ協賛が自社の社会貢献活動の旗振り役となり、社内外での自社の社会貢献活動の意図を浸透させることにつながります。 一方の競技団体にとっても社会貢献事業の推進は公共財としての命題の一つであり、また選手のセカンドキャリア支援やデュアルキャリアといった側面でも有益な施策となり得るため、協賛社とタッグを組んで事業にドライブをかけることに大きなメリットがあります。
[Tips]自社の社会に対する貢献姿勢を体現する場としてスポーツ協賛を活用する社会貢献型
インナー支援型
スポーツの持つ価値を活用して、協賛社の社員をはじめとするインナーを支援するというパターンです。 支援には大きく分けて2つの方向があります。1つは社員とその家族に試合の観戦機会を設け、社員のモチベーションや企業へのロイヤルティ向上を目指すものです。単なる福利厚生の一環というよりも、企業の社是や目指す方向性とそのスポーツや競技団体が示す価値が合致することで協賛を行うケースが多く、スポーツの持つ価値を通じて社員のベクトルを合わせ、社員同士や企業と社員との結びつきを強めることが目的です。
もう1つは営業・販促現場の支援です。観戦チケットの提供などにより、協賛社の現場部署の営業・販促活動を支援するためのツールとして協賛権益を活用するものです。企業にとって営業・販促現場からの評価は社内で強い影響力を持つケースが多いため、効果的な支援の枠組みが組めると、永続的なパートナーシップの構築につながりやすくなります。 競技団体にとっても、このタイプは協賛社の現場部署など幅広い部署との接点が生まれやすく、また、集客面での効果も期待でき競技団体にとっても、このタイプは協賛社の現場部署など幅広い部署との接点が生まれやすく、また、集客面での効果も期待できるため、権利元の積極的な関与を期待しやすい領域です。
[Tips]インナーのモチベーションやロイヤルティの向上および営業・販促活動に活用するインナー支援型
まとめ
今回の分類は、協賛社が実際に取り組むアクティベーションを切り口に、事業共創型・社会貢献型・インナー支援型と区分けしています。しかし、いずれのパターンにおいても共通するのは、インナー、顧客、社会など社内外のターゲットに対し、スポーツ協賛が協賛社の伝えたい企業メッセージを発信するためのツールとなっている点です。
スポーツそのものや競技団体はそれぞれにビジョンやミッションを持っています。これらと企業が目指す方向性が合致することで、スポーツ協賛が企業価値を高めるための有効な手段になり得るのです。様々な地域や世代に広がるスポーツへの関心が高まっている今日、企業の掲げる方向性を体現するための象徴として、スポーツ協賛が有効な選択肢となっている潮流が生まれていると言えるでしょう。