広告代理店という言葉って考えてみると少し不思議な言葉ですよね。広告業務を誰かの代理で調整して実行する、という意味がその中に含まれていて、その実態を言葉として表している面と、一部しか表していない面があるような気がします。
広告を出したい時に相談するのが、広告代理店、というのは分かるのですが、果たして、それ以外のことって、どうなのでしょうか?
どこからどこまで、何をどんなふうに相談できる会社なのかは、広告代理店が「総合型」なのか「専門型」なのかによっても大きく違いますが、ここでは主に、総合型の広告代理店について話を進めていこうと思います。
なおこの記事では、「広告会社」という現在一般的な呼び名ではなく、やや前近代的な呼び名である「広告代理店」を敢えて使わせていただきます。
時代の変遷による広告代理店の変化
広告代理店という業種は、日本では明治時代に始まり、およそ130年の歴史を持ちます。もともとは新聞などの紙媒体に商品の宣伝を掲載する際に、媒体社と広告主との間に入って取次を行うことから始まっていて、それが広告代理店としての主要業務でした。つまり、もともとは広告枠を持つ媒体社(メディア)と商品を広告・宣伝したい広告主(企業)を繋ぐ役割だったわけで、それが「広告代理店」という名前の由来ということなのです。
この役割に加え、初めはサービスとして提供していたマーケティングやメディアプラン、クリエイティブ(広告表現の企画制作)など、「広告・宣伝の中身を組み立てる」という機能を積極的に持つようになり、発展していきます。おそらく黎明期には「せっかくだから、商品の宣伝の中身も考えてよ」というニーズから徐々にその機能を兼ね備えてきたのだと思います。
日本が戦後の高度成長期から石油ショックを経て、バブルに突入するまでは、基本的には市場が拡大していく時代が長かったので、特に人気のあるテレビのCM枠などで広告を出すことは難しく、メディア側、そして取次として調整する広告代理店にとっては比較的、売り手市場の中で商売をすることが出来ていました。
少し乱暴に言うと、テレビや新聞などのマスメディアが持つ価値のある広告枠を扱うことが出来れば、広告を出したい広告主はたくさんいたので、広告代理業だけでもある程度ビジネスが成り立っていた時代でした。
それが目に見える形で変わってきたのが、バブル崩壊後、市場の成長が減速し、モノが売れにくくなる時代に突入してからです。商品を売るためのマーケティング支援事業や最適なメディアプランニングがより一層求められるようになってきました。誤解のないように補足すると、バブル崩壊以前も、もちろんマーケティングの要素は求められていましたが、バブル崩壊後の90年代以降はより一層マーケティングのロジックが広告主である企業に求められるようになってきた、と言えるのです。
[Tips]
・もともと広告代理店はその言葉の通り、広告枠を持つ媒体社(メディア)と商品を広告・宣伝したい広告主(企業)を繋ぐ役割
・市場の成長が減速してくると、上記に加えて、商品を売るためのマーケティング支援事業や最適なメディアプランニングがより一層求められるようになってきた
いま、広告代理店はどうなっているのか?
もともとは、その成り立ちも含めて、メディアの枠をおさえることがそれぞれの広告代理店の力の源泉になっていましたが、その後に来たのが前述のように、マーケティングのロジックを求められる時代、つまり商品を売るための戦略をより一層広告代理店が考えなければならない時代へと移り変わっていったのです。
その商品を売るために、リサーチをして、ターゲットを決めて、どのメディアが効果的なのか最適なメディアプランニングをして、クリエイティブに落とし込んで、更に効果測定をして、PDCAを回していく、という「統合型ソリューション」の提案を求められるようになりました。さらに、ある商品だけのソリューションにとどまらず、企業全体の経営戦略や長期ビジョンなど「川上の戦略」への提案にもニーズが高まってきました。
こうなってくると広告代理店の機能はもはや「代理店」の域をとうに超え、企業のコミュニケーション活動全般に対するコンサル的役割も併せ持つようになってきた、と言えます。
もし、コンサル会社にこうした一連のマーケティング業務をお願いするとしたら、それだけで高額なフィーを要求されますが、広告代理店はもともとメディア枠を買う、ということが前提になっているので、ある程度のところまでの相談であれば、気軽にできるのは、その成り立ちの違いによるものだと言えます。ある一定の規模の総合広告代理店が持つ今現在の機能として、メディアバイイングという「代理業」に強みを持ちながら、最適なメディアプランニングを提供し、商品を売るためのマーケティングと戦略を考えることが出来、クリエイティブに落としこむこと、が備わっており、その一連の作業をワンストップで提供できることに強みがあります。
今では広告やマーケティングを越えた課題解決の相談をされることも大手の広告代理店を中心に増えています。メディアバイイング前提ではない課題解決のための相談をした結果、その課題解決の打ち手として、戦略の中にどのようにメディアプランを組み込むかという話にまで発展する、という流れも見られるようになりました。具体的なコミュニケーションプランまで一貫して相談できることは広告代理店のアドバンテージと言えるでしょう。
[Tips]
・総合広告代理店の強みは、コンサルにとどまらず、メディアバイイングと最適なプランニング、更にはマーケティングや戦略をワンストップで提供すること
・企業の課題を広告代理店に相談した結果、課題解決の打ち手として広告代理店がメディアプランを提案することも増えてきている
プレーヤーの多様化
もともとは広告の取次ぎとして始まった広告代理店ですが、時代の変遷や、その機能を増やしていくにしたがって、その市場での新たなプレーヤーと対峙することになっていきました。
まずは、マーケティング領域ですが、2023年には日本のインターネット広告が媒体別広告費の中でトップの45.5%となり、総広告費のおよそ半分に迫る中で、その領域専業で力を伸ばす会社が台頭してきました。
また、マーケティングに戦略が加わると、コンサルティング会社と広告代理店が競合プレゼンで争う場面も増えてきました。一般的な傾向としては、コンサルティング会社は経営課題から考えて、実際の打ち手に落とし込む、という川上からのアプローチであったのに対し、広告代理店は商品を売るために、最適なメディアプランやクリエイティブを提案し、マーケティング戦略を構築していく、という、川下からのアプローチでした。それが、コンサルティング会社も実際のエグゼキューション、つまり打ち手の実施まで求められるケースも出てきたため、一部のコンサルティング会社ではその体制を整えてきました。逆に広告代理店のほうは、マーケティング戦略だけにとどまらず、その企業の本質的な経営課題に向き合うことも求められるようになった、というのは既述の通りです。
更には、以前よりも一部の広告枠が売れにくくなったことにより、大手の広告代理店だけでなく、PR会社や制作会社も広告枠を扱うことが出きるようになり、ますますプレーヤーは多様化してきています。
[Tips]
・総合広告代理店は今、専業広告代理店、コンサルティング会社、更にはPR会社や制作会社などとも競合する場面が増えてきている
広告代理店をどのように使うのが良いか?
では、最後に、ここまでの話を踏まえ、冒頭で提示した
「広告代理店は、どこからどこまで、何をどんなふうに相談できる会社なのか」
すなわち、広告代理店をどのように使うのが良いのか、考えてみましょう。
今さらながら、広告というのはある目的を達成するための手段でしかありません。まずは目的があって、どういう手段があるのかを知りたい時に、広告代理店は気軽に相談できる相手であるということです。
企業側の目的は、「この商品を売りたい」「このサービスの認知を高めたい」というものから「企業コミュニケーションやブランディングをどうしていけば良いのか」、更には今後の中長期にわたる経営課題に至るまで多岐にわたりますが、幅広く対応できるだけのリソースが総合広告代理店にあります。
以前は「広告を出したい」という明確な目的に応じる形で、広告代理店が業務を行っていましたが、今は必ずしも「広告を出したい」ということでなくても、それぞれの課題をヒアリングして、その課題に応じてオーダーメードで対応することも増えてきています。
従って、「広告代理店をどのように使うのが良いか?」で言うと、その答えとして適切なのは「課題を感じたときに相談する相手」と考えると良いのではないでしょうか。たいていの場合、それぞれの広告代理店は、業務に関する相談窓口を設けていますし、元来「相談」を生業にしてきた会社ではないので、いきなりフィーを請求されることもありません。その意味では、コンサルティング会社に相談するよりはずっと敷居が低いはずです。
気軽に相談してみてはいかがでしょうか。あなたが今抱えているその課題に対する答えが見つかるかもしれません。
[Tips]
・色々な変遷を経て、今の総合広告代理店は「課題を感じたときに相談する相手」であり、その課題に応じてオーダーメードで対応してくれる頼れる存在である
まとめ
広告代理店に何を相談するか、について記載してきましたが、もちろん総合広告代理店の多くは、大手メディア、特にテレビ広告に強みがある場合が多いです。
まだまだ大きく認知を広げたりする場合のメディアプランニングに、テレビ広告をはじめとするマスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)は大きく寄与します。ただ、課題解決のためには、インターネット広告を組み込んだ統合プランニングや、マーケティング、そして戦略が欠かせません。
そうした時にワンストップで課題解決の相談相手になってくれる人がいたら頼もしいですよね?あなたの近くの総合広告代理店にも、そんな頼れる人がきっといると思います。その意味で「広告代理店」という言い方は、もはや体を表してはいないかも、知れませんが。