生成AIと広告業界の現在~広告の現場をどう変えたのか?

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生成AIと広告業界の現在~広告の現場をどう変えたのか?

2023年は生成AI元年と呼ばれ、対話型のチャットボットであるChat GPTの急速な普及や、画像生成AI、動画生成AIなども複数のものが登場した年でした。生成AIは日々進化を続け、実務への応用を試みる企業も増え、その拡大は加速しているように見えます。既にいくつかの業界では、生成AIの登場によって、従来は人手がかかっていた業務の一部がAIに置き換わられたものも存在します。近年のAIの進化によって、従来は人間のみが可能だと思われていた仕事でも、「AIに仕事が奪われる」事態が現実のものとなりつつあります。

そのような状況の中、広告業界のようなクリエーティビティが求められる仕事、例えばコピーライティングやCMプランニング、動画広告の制作、ブランド戦略の立案などはAIには不可能だと言われていましたが、実際にはどうなのか?生成AIの登場によって、広告の仕事の現場はどのようになっているのか?
日々変化する広告業界の状況を2024年の前半の時点で概観し、今後の影響について考えてみたいと思います。

Chat GPT登場のインパクト

AIチャットボットのChat GPTがリリースされたのが2022年の11月で、2023年には急速に利用が進みました。この間、広告業界でも多くの場面で活用されるようになりました。
ここでは、その中でも代表的な使われ方について見ていきます。

コピーライティング

広告業界のなかで、最初に大きな衝撃をもって受け止められたのがコピーライターの方々でした。Chat GPTの登場以前にもAIを使ったコピーライティングのツールは開発されていました。実際の例としては電通が開発したAIコピーライターのAICOなどが挙げられます。
このような既存のAIに比べて、Chat GPTが長い文章を極めて短時間で大量に生産し、その内容も人間が書いたものと同様の自然な言語だったことから、短文のキャッチコピーのみならず、長文のボディコピーも含めてAIが人間のコピーライターにとって代わる時代がきた、といった意見もありました。しかし、実際には大きな話題になるようなコピーが作成されたという事例はこれまでのところ見当たりません。消費者や世の中の動向を反映し、商品やサービスの魅力を伝えて、人々の心を掴み話題になるようなコピーを書くのはAIには難しいのが現状のようです。
ただ、短文で大量の広告を作る必要がある場合には、AIがコピーを書くことで大幅に人による業務を軽減させることができることがあります。オンラインのディスプレイ広告等で、多数の広告を作ったうえで広告の効果をABテストによって測定し、最適化を進めるといった場合に、多数のコピーを短時間で作ることができるAIは、業務効率化に大いに役立ちます。このようなコピーライティングの仕事はAIの得意領域であるといえるでしょう。

情報収集ツールとして

マーケティング戦略の立案やブランディング業務においては、膨大な情報を収集して的確に課題を把握したうえで、課題解決のソリューションを検討する等のステップで進める必要があります。このような情報収集を行う際に、従来であれば既存の刊行物を収集したり、オンラインで検索してデスクリサーチを行ったりといった方法が主流でした。これらの情報収集の方法では、膨大な時間がかかったり、検索する人の能力次第で収集できる情報の量や質に大きな差が出たりといった問題点がありました。このようなときに、Chat GPTを検索ツールとして活用することで、より重要度の高い情報を収集することができ、業務の時間短縮が可能になるだけでなく、収集できる情報の量や質が向上するなどの利点があり、Chat GPTを情報収集ツールとして活用するという使い方が普及してきました。
ただし、AIは一般的に過去のデータを学習したうえでアウトプットを出すものなので、最新の情報が反映されていない場合があり、Chat GPTについてもそのような制限がありました。そのため、Chat GPTに限らず、AIを検索ツールとして活用する場合には最新の情報が反映されていない場合があることを理解したうえで使用することが必要です。

グローバルアダプテーション

Chat GPTは既に多言語に対応しているため、翻訳ツールとしても利用可能で、これによって広告をグローバルに展開すること(アダプテーション)においても活用されています。もともとは英語がメインであるため、英語への翻訳が最も効果的だと思われますが、日々の進化により、他の言語への良質な翻訳も可能になってきました。
従来、広告をグローバル展開する際には、単に言語を翻訳するだけでなく、その市場の特性にあったカスタマイズが求められ、大きな労力を必要としていました。しかし、AIを活用することで、翻訳された言語表現が自然なものになるだけでなく、国によって異なる消費者の属性を反映させたカスタマイズも可能になっています。
もちろん、現在でも現地の市場情報に詳しい経験豊富なプランナーによって、翻訳された表現の文法や単語が適切かどうかのチェックだけでなく、現地の消費者インサイトにもとづいた効果的な表現になっているかどうかを確認することが求められますが、その作業の際にAIを活用することで労力を軽減することができます。
Chat GPTのような既存のツールもより多くの言語への対応を進めていくものと思われ、グローバルアダプテーションでの活用はさらに進むものと予想されます。

【Tips】
・コピーライティングでは、大量のコピーを生産する必要がある場合は特に有効
・情報収集ツールとしても優れているが、最新情報が反映されているかどうかは要確認
・グローバルアダプテーションの可能性はさらに広がる

画像/動画生成AI

クリエーティビティにおいて、広告業界では生成AIがより大きなインパクトを与えたのは、画像/動画生成AIだったと思われます。現在、どのような活用がされているかを見ていきます。

作業時間のスピードアップによる効率化

コピーライターにとってもAIは業務の効率化に貢献するものでしたが、画像/動画の領域において、そのインパクトはより大きなものだったといえるでしょう。
例えば、従来であれば、CMのプレゼンテーションで使用するストーリーボードの作成にもかなりの期間と費用がかかっていましたが、それを大幅に削減することが可能です。また、CM撮影をする前に、イメージをしやすくするために自動で生成された動画で仮の制作物を作り、その段階で広告主と制作側が調整を行うといったことも可能になりました。このように、制作プロセスの大幅な効率改善に、AIは大いに役立っていることが分かります。
さらに、コピーと同様に大量の広告画像を制作する必要がある場合にも、AIは短時間で多数のパターンのアウトプットを行うことが可能なので、コピーとの組み合わせで無限のパターンを作ることができ、ABテストによって最適な広告を選択するといったプロセスにおいても効率改善をすることができるようになりました。
このように、効率改善という点から、画像/動画生成AIのインパクトはとても大きかったといえます。

現実には存在しないものを生成する

画像生成AIは、現実には存在しない人や物、また、現実ではない映像を生成することも可能です。近年、様々なキャンペーンで、AIが生成したタレントが登場するものが増えてきています。AIなのでタレントの出演料もかからなかったり、かかったとしても極めて低廉な価格で起用できたりする場合があります。現実には存在しないタレントの画像や動画を作ることは、AIが現在ほど幅広く活用されるようになる以前のときでもCGを用いれば可能ではありましたが、AIを活用することによって、安価でスピーディーに実現することが可能になりました。
ただし、このような架空の画像/動画が誰でも簡単に作ることができるため、あたかも現実に存在したのではないかと見えるけれども、実際には「偽物」の画像/動画を作ることもできるようになり、その結果「フェイク・ニュース」と呼ばれるような虚偽のニュースが流布することも増え、大きな問題となっています。画像/動画は、一見リアルなものと思われる場合に、人は一般的に信じ込みやすいため、広告制作の場においても高い倫理観を持って制作していくことが求められるでしょう。

【Tips】
・業務の効率化の視点では、画像/動画AIの方が大きな影響が
・誰でも簡単に架空の画像/動画を作ることができるようになったが、偽物の情報を拡散させないように、高い倫理観を持つことが重要

まとめ

生成AIは広告業界に多大なインパクトを与え、今後もますますその影響力は強くなっていくものと思われます。ただし、現時点ではあくまでも人間の仕事の効率化を支援したり、高度な仕事に取り組む際のサポートをしたりしてくれるものであると考え、うまく活用していくことが重要です。同時に、「フェイク」と呼ばれるようなコンテンツを簡単に作れてしまうという問題もあるため、今後、広告制作者にはより高いレベルの倫理観が求められるようになります。
AIとの付き合い方は広告業界の関係者にとって未だに手探りの部分が大きいですが、さらに注目される領域になっていくことは間違いないので、広告の仕事に携わる方は、日々のアップデートを意識して行っていくことが必要です。

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