ビジネスにおいてお客さんが大事というのは、昔から言われていますし、商売の基本中の基本ですよね。顧客が求めるものを商品やサービスに変えて開発する、リサーチして開発する部門の重要度は昔も今も変わりません。
でも昔と今で大きく違うのは、以前は「売ること」がゴールだったのが、今は「売るまで」の重要性とともに「売ってから継続的に顧客で居続けてもらう」ことが、とても重要になってきていることです。
そういった意味でも、今ほど顧客の本当のニーズや思いを知ることが大事になってきている時代はないと思いますので、まずはそのあたりの背景から見ていきましょう。
市場をめぐる環境の変化
市場を巡る環境の大きな変化。その一つ目として、情報量が飛躍的に増えたのと同時に、それを瞬時に顧客がアクセスできるようになったことが挙げられます。
情報量が今より少なく、接するメディアが限られていた時代は、大量に広告を投下すると、ある程度その投下量に伴って、ヒットを作り出すことが出来ていました。今から考えると、この時代は売り手である企業がある程度優位性を持てた時代でした。それが劇的に変わったのは、インターネット、中でもクラウドサービスの普及により情報量が飛躍的に増えた頃です。デジタルの世界ではクラウドの出現前をBC(Before Cloud)、出現後をAC(After Cloud)と呼ぶこともあるようですが、いずれにしても、顧客が多くの情報を入手できるようになると、以前は、例えば家電を買う時に、量販店のセールスアドバイザーに任せきりだったのが、場合によっては顧客のほうがセールスアドバイザーよりも広くて深い情報を得ることが出来るようになり、必ずしも売り手が優位性を持つことが出来なくなってきたのです。
もう一つ忘れてはならないのは、サブスクの登場です。モノを所有することへの拘りがない世代にとって、むしろ多くのものにアクセスが出来、なおかつ所有することのリスクがないサブスクは、コスパ(Cost Performance)やタイパ(Time Performance)を重視する流れにも乗り、急拡大していきました。音楽配信ではApple Musicやspotify、映像コンテンツならHuluやNetflixなど。さらに、トヨタのKinto やHondaのON、日産のClickMobiといった車のサブスクも登場。家電やファッションまで見かけます。
サブスクビジネスのとても重要な点は「サービスを売った後も継続的に顧客で居続けてもらう」ということです。従って、各事業者は既存顧客に対して、リテンションのために多くのことに取り組み続けることになり、そうしたサブスクの特徴がサブスクモデル以外のビジネスでもより強く求められるようになってきたのです。
つまり、情報量が増え、選択肢も増え、更にサブスクモデルの登場によって、より顧客優位の市場に変容してきたのです。
【Tips】
・市場を巡る環境の大きな変化の一つ目は情報量が飛躍的に増えたのと同時に、それを瞬時に顧客がアクセスできるようになったことが挙げられる
・もう一つ忘れてはならないのは、サブスクの登場。サブスクビジネスのとても重要な点は「サービスを売った後も継続的に顧客で居続けてもらう」ということ
・情報量が増え、選択肢も増え、更にサブスクモデルの登場によって、より顧客優位の市場に変容してきた
顧客に対する考え方の変化
売上を上げるために必要な方向性を敢えて単純化すると、大きく3つに集約されます。それは ①新規顧客を掴む ②1人当たりの売上単価を上げる ③既存顧客を逃がさない という3つです。従来、企業が新規のキャンペーンを行う際に念頭に置いていたのは①と②で、③については、少なくとも優先順位としては①と②に比べると低く扱われてきました。どうやったら新規顧客を掴むのか、もしくは競合他社からブランドスイッチさせるか、ということが、多くのキャンペーンにおいて新しい商品やサービスを開始するときの核でした。
ただ、この考え方は市場がどんどん大きくなっている時には通用しても、今の日本のように人口が徐々に減っている市場では通用しなくなってきます。
そこで、③既存顧客を逃さない、という方向性が注目されるようになってきたのです。
既存の顧客を大事にしている会社と、顧客になった途端に手のひらを返す会社は、顧客からするとすぐに分かります。例えば、問い合わせの電話一つにしてもその会社の本当の姿勢が分かります。技術者でもあるダイソンの社長が「日本の顧客が商品を育ててくれた」と、あるインタビューで語っていましたが、実際にコールセンターにかかってくる電話の声を拾って、商品の改善に役立てていたそうです。
既存顧客をいかに満足させられるか、そして次も選んでもらうようサポートしていくか、それは商品やサービスがすぐにコモディティ化してしまう今の時代において、とても重要なことになっています。
【Tips】
・①新規顧客を掴む、②1人当たりの売上単価を上げる、③既存顧客を逃がさない、という売上増大のための3つの方向性のうち、今注目されるのは③
・既存顧客に満足してもらい、次も選んでもらうことは、今の時代においてとても重要
カスタマーサクセスとは?
2,000年代に言われ始め、それから徐々に浸透してきた言葉に「カスタマーサクセス」という言葉があります。これは企業の利益をベースに商品やサービスを考えるのではなく、顧客の成功が企業の利益になる、として、顧客の成功のために一緒に伴走するという考え方です。財務上の性質から見れば、顧客に対応するという意味でのカスタマーサポートという考え方はこれまで利益を生まないコストセンターとして認識されていましたが、同じ顧客への対応でも、視点を根本的に変えて対応するカスタマーサクセスは収益ドライバーの可能性を大いに秘めるのです。但し、もちろん顧客の言うことを全て無条件で聴く、ということではありません。顧客の成功(サクセス)を創出しながら企業利益も生み出さなければなりません。いかにその二つを交わらせるか、というのが重要で、そのためには少なくとも以下のことを実行する必要があります。
まずは、その商品やサービスが誰に対してのものなのかを規定しなければなりません。プロダクトマーケットフィット(PMF)と呼ばれますが、どこにもいない誰かのための商品やサービスは当然、何も生み出しません。
次に、その商品やサービスがどうしたら成功(サクセス)なのか、企業視点だけでなく、顧客視点で考える、もしくは実際に顧客にヒアリングすることです。
今いるロイヤルカスタマーにヒアリングすると、企業視点では認識しきれなかった、その商品やサービスの良さが見えてくることがあります。そうした中から顧客にとっての成功、つまりカスタマーサクセスを見極めていくのです。
【Tips】
・カスタマーサクセスとは、「企業の利益」ベースではなく「顧客の成功」が企業の利益につながる、として、顧客に伴走するという考え方
・顧客の成功を創出しながら企業利益も生み出さなければならない
・商品・サービスが誰に対してのものなのかを規定し、次にどうしたら成功なのか、企業視点だけでなく、顧客視点で考える
どのように効果測定して、継続顧客になってもらうか?
カスタマーサクセスは、一旦その道筋をつけたら終わり、ということではありません。継続的に顧客動向を把握し、何かあれば常に改善していかなければなりません。そのためにも、顧客のコミュニティを形成し、そこからデータが取れる仕組みを導入する必要があります。「ポイント」「会員登録」など企業による「コミュニティマーケティング」は、効果測定をして、既存顧客をリテンションする意味でもとても重要なのです。
今や、顧客の多様化が進み、デモグラフィックデータなど定量的情報だけで購買傾向を判断することが非常に困難になっているため、一人一人の顧客と直接繋がる機会を企業としても求めているのです。
これからは、そのデータを分析して活用するのに、AIがますます大きな役割を持ってくることは間違いありません。既に、個々の志向へのきめ細かい対応をしてくれるものもあります。
一方で、アナログ的に顧客に深くインタビューする「デプスインタビュー」の必要性もなくならないと思います。特に目の前にいる人から聞く、ナラティブとしてのカスタマーサクセスに至るストーリーは、AI時代になったとしても深い示唆を与えてくれるものだと思います。
言い方を変えると、カスタマーサクセスを実現させるために、コミュニティマーケティングも、AIによるデータ分析も、そして顧客へのデプスインタビューも全て活用していく必要があるのです。
【Tips】
・継続的な顧客動向の把握と改善が必要
・コミュニティマーケティング、AIによるデータ分析、そして顧客へのデプスインタビューも活用していく
まとめ
いかがだったでしょうか?
顧客とともに歩むということは、常に顧客の成功に向けて伴走していく姿勢を取る、ということで、点ではなく線であり続ける、ということです。その中で、企業としても収益を上げて、成長していくというWin-Winの関係をどう継続的に作っていくのか、ということがカスタマーサクセスの基本です。一過性のものではなく、企業としての姿勢に「共感」してもらうことが長く関係を続けていくための鍵になると思います。
更に顧客に寄り添った手法として「ファンマーケティング」など「ファン」という単語をキーワードにした考え方もありますので、興味ある方はそちらも調べてみるとよいかもしれません。