商品パッケージデザイン事情~広告会社の現場から

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商品パッケージデザイン事情~広告会社の現場から

広告会社ではテレビ、新聞、ラジオ、インターネットなどメディア自体を扱うのはもとより、それぞれに対応する素材も制作をします。筆者自身アートディレクターとして主に新聞、ポスター、雑誌などのグラフィックメディアの素材を制作していましたが、商品パッケージを制作する仕事も舞い込んできて、食品、飲料、美容系のものなど数多く携わりました。そこで、その経験をもとに「広告会社ではこんなふうに商品パッケージを制作します!」ということをお伝えできればと思います。

広告会社での「広告」と「プロモーション」

最初にパッケージデザインの機会が訪れたのはどんぶりタイプの「カップ麺」でした。この時代、1990年代初頭ですが制作の背景としてパッケージの仕事は広告というよりプロモーションの分野でしたが、まだ入社2、3年目の自分は言われるがまま何の疑問も持たず取り組みました。というのも、これ以前にも同じ食品メーカーさんの別のカップ麺の広告及びプロモーションに参加しており、この時はパッケージデザインの制作はありませんでしたが、ポスターや新聞・雑誌の広告以外にも、テレビCMで出演していたキャラクターをアニメ化や、CMソングのCDジャケットのデザイン、キャラクターを使用したゲームソフトのパッケージデザインなどなど、当時のプロモーションの規模としてかなり珍しいくらい大掛かりなものでした。若手アートディレクターだった自分の部署のミッションである広告制作とはちょっと違うと戸惑いながらも、何か面白いことができるのではないか、いや、やろう!という感じでした。そんなモチベーションのところにパッケージデザインの話が来たわけですが、このように、主に広告クリエイティブを受け持つアートディレクターがパッケージデザインに携わることがある、というのも、広告会社ならではかもしれません。
改めて広告とプロモーションの違いですが、主に目的と手法にあるかなと思います。広告は製品やサービスを販売するために、一般的に広範な視聴者に向けて情報を提供することを目的とし、主に有料のメディアスペースを利用します。一方、プロモーションは、製品やサービスの売上を促進するために特定のターゲットに焦点を当て、イベント、割引、無料サンプルなどの手法を使用します。言い換えれば、パッケージデザインを「メディア」としても活用したいと考える場合、広告制作者が力を発揮する可能性が高いといえます。

【Tips】パッケージを「メディア」として考える際、広告制作者に強みが

パッケージデザイン・現場レポート

1.商品背景

先ほどの「カップ麺」は当時ラーメンブームが起こっている最中で、今では珍しいことではないかもしれませんが美味しいラーメン屋があると何時間も待ってでも食べる、というのが当時はちょっとした社会現象と言われていました。全国各地のラーメンが注目を浴び、地方のラーメン店が首都圏に店を出し始めた、そんな中でラーメン店の味に近づけようと開発された「カップ麺」でした。

2.デザイン制作スタート!

新発売の場合、名前、商品名がまだありません。商品名がないとパッケージデザインも考えられず、商品名が決まってからと思いがちですが、そこはやはりスケジュールというものがあって、そんな悠長に構えているわけにはいきません。
ネーミング作業の進捗が見えた頃に推しのネーミング案をもらい、どんなパッケージにするか大体のイメージでデザインを始めます。すでにカップ麺の開発コンセプトは聞いているのでデザインの方向性はある程度絞って進められます。まれに容器の形状まで開発する場合もありますが、この時は既存のものだったのでデザインする範囲も想定ができます。
早い段階で試食もします。実際に味わってみて開発コンセプトを確認します。食べたからといって何かデザインが変わるのかというと正直なところはっきりわかりませんが、モチベーションは確実にあがります。また、試食会はちょっとした懇親会のような感じで、オリエンでは得られなかった情報やクライアントといつもとは違った距離感で会話できることに意味があると思います。このような、メーカーの商品開発者とデザイナーとの間に生まれる共感は、見えないところでデザインの完成度に寄与するように思えます。

3.デザインを考えるうえで

ポスターなどのグラフィックメディアと大きく違うのは、平面だけの二次元の世界ではなく、正面、天面、側面を考えなければならないこと。平面的な要素が大きいのは「フタ」の天面でここが一番見て欲しいところで、アイキャッチとなる”顔”になります。どんぶりタイプは天面が顔になりますが、カップタイプになると天面より正面が”顔”となります。売り場では、この”顔”が有効なメディアとして意識されるべき面と言えるでしょう。
これは「カップ麺」限ったことではなく、パッケージの形状によって必然的に一番よく見える面、見せることができる面があって、お店の陳列棚に並べられた時にどう見えるのか、周りや隣にどんな商品が並ぶのか、埋もれたりしないか、どんな人に気づいてもらいたいのか、その状況をイメージしながらデザインすることが大切になります。
その顔部分には、商品ロゴ、シズルカット、どんな味なのかを説明するコピーなど、限られたスペースの中にいろんな情報が集約されます。パッケージを「メディア」として意識する際、ある意味ここが今後のコミュニケーションの起点になるといっても過言ではないでしょう。
ただ、だからといって何でもかんでも詰め込めればいいというものではありません。ありがちなのはクライアントの要望が多すぎて情報が過多になってしまうこと。そして、かなり直接的な事を求めてきたりします。いわゆる”ベタな表現”です。全部を採用したらあっという間にパッケージ面が埋め尽くされてしまうので、一番伝えたいことを絞り込んでシンプルにすることが大事だと思います。
逆に、デザイナーやコピーライターは少しでも目立ったり人の気を引くためにひねりや面白味を加えたりして表現的になっていき、クライアントの伝えたいことが不十分になりかねないので注意が必要です。要は、パッケージの「メディア」としての役割をどう考えるか、というコンセンサスの問題かと思います。

4.表示に関するルール

パッケージには買う人がどんな商品なのかわかりやすく安心して選べるように、安全性や機能性に関する表示を入れなければなりません。カップ麺であれば食品表示法の項目に従った商品名や原材料などですが、これはクライアントから情報をいただいて、いいデザインをするというより規定を守って間違いなく入れます。
デザインに影響してくる規定も多々あります。例えば、カップ麺以外で果汁の入った飲料です。オレンジジュースの場合、パッケージにみずみずしいオレンジのスライスされた断面から果汁が滴り落ちる…という画像を使いたいとしても、果汁が100%のものでないと使用することができません。果汁のパーセントによって果物の表現の仕方がイラストならOKとかキャラクター化したものならOKとか細かく決まっています。
法律に関わることでここでは深掘りしませんが、メーカーとデザイン担当者がしっかりと確認を取り合って進めなければなりません。メーカー側が、法律的なことも含めてワンストップで依頼したつもりでいる場合もあるかもしれないので事前に確認したほうが良いでしょう。

5.シズル撮影の裏腹

デザイン案がある程度決まってくると多くの食品でやらなければならないのが”シズル”の撮影。シズルとは食品をとことんおいしく見えるように撮影した映像や画像のことで、正確にはシズルカットと言いますが略して”シズル”と呼んでいます。
とことんおいしく見えるように撮影をするのですが、その仕上がりとは裏腹に実際に撮影したものは食べられるものではありません。というのも撮影をするのに、ずっと熱いままだと麺が伸びてしまったり、湯気が邪魔だったり足りなかったり、逆に冷めると脂に艶がなくなったり、具材が萎びてしまうので常に具材を新鮮なものに差し替えたり、艶を出すための特別に配合した油を塗ったりしてあたかも作りたての様なおいしそうな状態にします。撮影現場には必ずフードコーディネーターが同行していてその作業を担います。そういうわけで撮影用に仕上げた商品は、見た目は美味しそうでも実際には食べられない、いや、食べないほうがいいものになっているのです。

6.モックアップは必需品

デザインが最終的なほぼ決定という段階になってくると、実物のパッケージの無地なものをベースにして”ほぼ完成品”を作ります。これをモックアップ、通称「モック」と言います。一つ一つ手作り工作をして作ります。これは、デザインを三次元で確認できるということと、店頭を模した陳列棚に他の商品と並べてみてどのように見えるか、ちゃんと目立っているかなど存在感の検証を行うことができます。問題あればデザインにフィードバックします。
近年ではデジタル画像でより実物に近いものがモニター内で表現できるのでモックを制作する必要性も少なくなっているように感じます。ただ、実際に手に取った時の感触が影響するパッケージもあるためその場合は必ず作るようにします。
カップ麺だとフィルム状のものでラッピングされるのであまり関係ないかもしれませんが、例えば化粧品やお酒の外箱など、紙の種類によって見た目も含めその触った時の感触などもこだわって選びます。モックも実際にその紙を製紙会社などから取り寄せたりして制作したりします。
また、多くの新商品開発の場合、”リサーチ”を行います。その時にモックが活躍します。リサーチの中でもグループインタビューは、一般の方々から商品ターゲットの条件に当てはまる方々を募集し、セッテイングした会場に集まってもらい商品に関するアンケートに答えていただくのですが、その流れでモックも手に取ってもらいます。

7.リサーチの憂鬱

グループインタビューは4人から5人のグループで必要に応じて組まれますが、多い時だと2日間に分けて行われることもありました。ファシリテーターの方が質問を回していき、そのやりとりをクライアントと共にマジックミラー越しに視聴します。
率直な感想や意見をダイレクトに聞くことができるのでポジティブな反応はデザイナーにとっても励みや自信になりますが、ネガティブな反応はダイレクトなだけにボディブローのようにダメージとなります。メーカーによってはネガティブな意見は全て払拭するように対応を求めてくることもありますが、その人の主観や好みだったり、答える方もインタビューされると答えなきゃいけないというプレッシャーがかかり、思っていないようなことでも答えてしまったりする傾向があるように思います。全てを鵜呑みにするのではなく、取捨選択しフィードバックしていくのが良いと思います。

【Tips】パッケージデザインには法的チェックの他、リサーチにかけることも多い。

まとめ

主に「カップ麺」の新発売時に携わった経験をもとに書いてきましたが、その「カップ麺」売れたのかというと、意外に早々と市場から消えました。テレビCMも大体的にやっていましたが、生き残ることはできませんでした。ただ、これはパッケージのデザインがどうのとかCMがこうのとかというより、地方にあるラーメン店の味がわざわざ行かなくても手軽にカップ麺で味わえるというコンセプトがその時代にはまだマッチしなかったということもあるかと思います。いやいや、ちゃんとお店に行って並んででも食べるよ…と。そういう機運であったと思います。
別のパッケージ案件でクライアントから「売れるパッケージデザインにしてください。」と言われた事がありますが、「はい、分かりました!」と答えられるはずもありません。売れるかどうか未来のことは誰にも確証をもって断言することなどできません。

商品開発の段階から、

◎単価が安いものなのか高いものなのか、頻繁に消費されるものなのか1度買えば十分なのか。
◎その時代のターゲット心理やバックグランドはどうなのか。
◎コミュニケーション施策、展開はどうするのか。

単にデザイナーの主観で売れると思うパッケージではなく、これらを含めて考えることで初めてパッケージデザインをすると言えるのではないかと思います。未来を予測することは難しいですが可能性を高めていくことはできるかと。パッケージデザインにもマーケティングが必要、ということでしょうか。その意味でも、パッケージの「メディア」としての価値を意識することはとても大切に思えます。

パッケージ制作の参考になれば幸いです。

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