スタジアム・アリーナビジネスの今と協賛について

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スタジアム・アリーナビジネスの今と協賛について

最近、新しいスタジアムやアリーナが地方で竣工し、稼働しているのはご存じでしょうか?北海道日本ハムファイターズが本拠地にするエスコンフィールドHOKKAIDO、バスケットボールワールドカップの会場となった沖縄アリーナ、そして2023年に開業したSAGAアリーナなど、魅力的な施設が次々に出来上がり、地方の観光拠点にもなっています。

今回はその3つの施設を通じて、スタジアム・アリーナビジネスの今と協賛について見ていきたいと思います。

エスコンフィールドHOKKAIDO

2023年シーズンから北海道日本ハムファイターズが本拠地として使用しているのがエスコンフィールドHOKKAIDO(以下、エスコンフィールド)です。エスコンフィールドは2023年、35,000人の収容人数を誇るスタジアムとして開場されましたが、その最大の特徴は、「球場を商業施設の中に組み込むことにより、野球やイベントのない日でも商業施設を楽しめる」ということです。球場を含むエリア全体を北海道ボールパークFビレッジ(以下、Fビレッジ)と名付け、球場の周りに複数のガーデンを設け、グランピング施設を作り、THE LODGEという名前の商業施設ではアパレルの専門店や飲食店などで、北海道ならではの魅力を体験・発見できる商空間を作り上げています。

エスコンフィールド

さらに、試合やイベントがない日でも、球場の一部となっているTOWER11という場所には無料で自由に入ることができ、様々なコンテンツが待ち受けます。もはや球場に併設されているレベルではないクオリティーのフードホール(レストラン)はもとより、ホテル、温泉、サウナ、ミュージアムに乗馬体験、ゴルフのシミュレーターなどもあり、試合がない日で十分に楽しむことが出来ます。

実は、Fビレッジをこのように作り上げたのには理由があります。一年間を通じて、たとえその球場がプロ野球球団の本拠地であっても、実際に使うのは全143試合の半分の72試合ほどになります。一年は365日ありますので、プロ野球だけで考えると年間の稼働率は20%に満たないのです。となると、プロ野球が行われていない日の稼働率をどう上げるか、言い方を変えると、プロ野球が行われていない日に、商業施設としてどう稼ぐことが出来るかがポイントになってきます。従って、Fビレッジは、プロ野球が開催されていない80%の日を、どのように稼働率を上げて集客していくかを考えたのです。つまり、Fビレッジは全てのスポーツ施設が抱える課題に正面から取り組んだ、日本でも類を見ない場所になっているのです。

【Tips】
・エスコンフィールドの特徴は、球場を商業施設の中に組み込むことにより、野球やイベントのない日でも商業施設を楽しめること
・Fビレッジは、プロ野球が開催されていない80%の日を、どのように稼働率を上げて集客していくかという、スポーツ施設が抱える課題に正面から取り組んだ、日本でも類を見ない場所

沖縄アリーナ、SAGAアリーナ

次に西日本の二つのアリーナ、沖縄アリーナとSAGAアリーナを見ていきましょう。

まず沖縄アリーナです。ここは、FIBAバスケットボール ワールドカップ2023の会場でもあったため、記憶に新しい人もいるかと思います。収容人数はスポーツイベントでおよそ8,500人、コンサートなどではおよそ10,000人とされています。
2021年に竣工されたこのアリーナはBリーグの2022−2023シーズン王者である琉球ゴールデンキングスの本拠地でもあり、その特徴は何よりも「観やすさ」にあります。すり鉢状の観客席はどこからでも選手やステージ、アーティストが観やすく、しかもアリーナの天井から510インチの大型映像装置が吊り下げられており、臨場感と迫力の両方をどの席からでも味わうことが出来ます。
この構造は結果的に選手やアーティストにとっても、観客の熱を感じやすくなり、バスケットボールワールドカップでは日本代表が後半からの大逆転を演じた原動力にもなりました。

沖縄アリーナ
一方、SAGAアリーナですが、こちらは2023年5月13日にグランドオープンの記念式典が行われた比較的新しい施設です。収容人数は8,400人で、県内のスポーツチームであるバスケットボールの佐賀バルーナーズやバレーボールの久光スプリングスの本拠地であるとともに、県内初のMICE、つまりMeeting(会議・研修・セミナー)、Incentive travel(報奨・招待旅行)、Conference & Convention(大会・学会・国際会議)、Exhibition(展示会)と呼ばれる複合イベントの会場としても活用されていくことを想定しています。
こちらもアリーナとしては最新の機能を持ち合わせ、アリーナ中央に吊り下げられたセンターハングビジョン、アリーナ内面を囲むように設けられたリボンビジョン、壁面ビジョンなどで多面的な演出を行うことができ、観客席も相撲の升席のようにエリアで区切って複数で見られる席や、映画館のようなカップルシートもあるので、それぞれの用途に合わせて来場者は満足感を高めることができます。

SAGAアリーナ
【Tips】
・沖縄アリーナの特徴は、観客:何よりも「観やすさ」。選手やアーティスト:観客の熱を感じやすいこと
・SAGAアリーナは県内初のMICE、つまりMeeting、Incentive travel、Conference  & Convention、Exhibitionと呼ばれる複合イベントの会場としても活用されていくことを想定している

及ぼす効果と目指す姿

さて、こうした新しいスタジアムやアリーナがもたらす効果には何があるのでしょうか?
よく「経済的効果は〇〇億円」という試算が行われ、国や大学の研究室、またはコンサルティングファームが発表していたりしますが、この数字は、ある出来事が起こることで、国や地域に経済的なプラスがどのぐらいあるかをシミュレートして、金額を示したものになります。

分かりやすく言うと、スタジアムが出来て、試合が開催されると、人が動き、交通機関が使われます。バスの臨時便が頻繁に出ると、新しい雇用が生まれますし、宿泊施設も稼働し、飲食店を含む商業施設などでも売上が伸びます。その日の売上が見込まれると、仕入れもいつもよりもたくさん必要になります。多くのプロスポーツのリーグでホーム&アウエー方式が採用されていますが、互いに送客しながら相乗効果を生んでいるのです。こういった効果を観戦チケットなどの直接的な売上だけでなく、関わる産業の間接経費まで含めた金額を算出したのが経済効果です。

地域の活性化、というのはよく聞かれる言葉ですが、課題となっているのは、継続的にその施設が使われるスキームをきちんと考えているかどうかです。10年、20年先も引き続き稼働率高く使われ、運営的にも健全な状態であることが、地域の活性化を持続可能なものにしていくうえで極めて重要です。

そう言った意味では、地域に根差したスポーツチームがその施設を本拠地にすることにより、継続的な稼働が考えられ、経済効果にも繋がります。但し、稼働率を上げる、もしくはイベントがない日でも楽しめる、という設計を施設の主体者が構想段階でしていかなければその効果は限定的なものになってしまいます。

経済産業省及びスポーツ庁では、地域活性化の起爆剤となる潜在力の高いスタジアム・アリーナの実現を目指す「スタジアム・アリーナ改革」に取り組んでいますが、その中の目指す姿として具体的に「多機能型」「民間活力導入」「街なか立地」「収益性改善」を挙げています。

【Tips】
・経済効果とは、ある出来事が起こることで、国や地域に経済的なプラスがどのぐらいあるかをシミュレートして、金額を示したもの
・経済産業省及びスポーツ庁では、「スタジアム・アリーナ改革」の中の目指す姿として「多機能型」「民間活力導入」「街なか立地」「収益性改善」を挙げている

協賛方法と協賛によって得られる効果

では、こういった施設をうまく活用しながら、企業活動に繋げていくためにはどうすれば良いのでしょうか?
協賛する方法は大きく分けて二つです。施設そのものに協賛する方法と、施設を利用するチームを通じて間接的に協賛する方法です。

施設そのものに協賛するのは、たとえば、エスコンフィールドのように、命名権(ネーミングライツ)を獲得する方法などがあります。そもそもエスコンとは不動産総合開発会社の「日本エスコン」が由来です。一方で、こうした大型の協賛ではなくても、Fビレッジには、大中小を問わず、100社以上の協賛社が名前を連ねています。
(https://www.hkdballpark.com/corporation/partner/)

また、施設を利用するチームを通じて間接的に協賛する方法としては、たとえばSAGAアリーナを本拠地とするプロバスケットボールチームの佐賀バルーナーズを例に出すと、こちらも大中小を問わず、地元の企業を中心に100を超える企業、もしくは個人がサポートしています。
(https://ballooners.jp/partner/14)

その効果は、まさに地元との一体感を高められるということが一番の魅力ですが、その施設やチームに対して、自らの専門性を使って直接的に貢献し、その実績を他の仕事に活かすという事例も最近増えてきています。エスコンフィールドのネーミングライツを獲得した日本エスコンはFビレッジ全体の事業開発に深く携わっており、B to Bの世界ではそのことは広く知られています。もちろん、ここまで大規模にならなくても、スポンサーとしてだけでなく事業の提携先としての側面を持つ協賛社が今非常に増えています。

今まさに、協賛という一方向の関係性から、事業のパートナーという双方向の関係性に移行しつつあり、そうした関係性を築くことが、持続的に施設やチーム運営を支える大事なポイントであり、ひいては地域の活性化につながることにもなるのです。
地元の施設やチームに資金だけではなく実際に商品やサービスを提供し、それが施設やチームを支えることにより、知名度や信頼性が向上し、結果として顧客との一体感を生み出していく。このことがこれからのスタジアム・アリーナ、そしてそれを支援する企業と地域が幸せな関係を作っていくうえで、とても大事なことになります。

【Tips】
・協賛する方法は大きく分けて二つ。施設そのものに協賛する方法と、施設を利用するチームを通じて間接的に協賛する方法
・協賛社という一方向の関係性から、事業のパートナーという双方向の関係性に移行しつつあり、そうした関係性を築くことが、持続的に施設やチーム運営を支える大事なポイント

まとめ

スタジアムやアリーナを新たに作る際に、将来的にずっと継続して使われていくこと、そして事業として収支が成り立つことは、とても重要です。だからこそ、施設側は小規模でも地元に根付いた協賛社を大切にしています。
スポーツをはじめとしたイベントを観ることは一体感と共に、次に向かう活力も与えてくれます。この週末、お近くのスタジアムやアリーナに足を運んで、イベントを楽しむとともに、その周辺や舞台裏を見てみると提携していくアイディアも思い浮かぶかもしれません。

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