今こそラジオ!?音声メディアのクリエイティブ的魅力とは

メディア

今こそラジオ!?音声メディアのクリエイティブ的魅力とは

冒頭から英単語の話です。media(メディア)という単語。これ、複数形だって知っていましたか?単数形はmedium(ミディアム)。こちらも外来語として日本人には馴染みのある言葉です。いわゆる複数形の不規則変化で、類似例としてdata(単数形=datum)があります。
さて、本題。「音声メディア(オーディオメディア)」って何でしょう?

「メディア」は単数形が「medium」ですから、単語自体の意味は「中間」というのが第一義的でしょうか。情報伝達の送り手と受け手の中間にあるもの、それがメディアですから、「音声メディア」は情報を音声のみで記録・伝達・保存するもの、ということになります。単に「中間」、つまり音声情報の通り道や保管場所、いわば道路や駐車場のようなものですから、そのコンテンツがどんなものか、アウトプットとしてどういう形で聴かれるのかは様々、使われ方次第、なのです。
では、どんな使われ方があるのか?「音声のみ」のメディア、ということでどんな特徴、メリットやディメリットがあるのか。ここではコンテンツ表現というクリエイティブ的な視点から見ていこうと思います。

「音だけ」だと、こんなに楽しい

ラジオだけじゃない…「音声メディア」の種類

冒頭の「メディア」という言葉の説明の中で、「道路や駐車場のようなもの」と書きましたが、音声コンテンツが通れる「道路」の種類は大きくは2種類、電波(無線)と、回線(有線)です。しかし「通り道」のことではなくて「使われ方」として見てみると、かなりの種類の音声メディアがあるのです。
コンビニやショッピングモールなどの店内放送、電車やバスの車内放送。地域の子どもたちに帰宅を促す放送も音声メディアの一つと言えるでしょう。ネットの中にも、様々な形態の音声メディアが時代の流れの中で次々と現れました。ニュースやドラマなどを配信するポッドキャストは比較的早い時期に誕生した音声メディアですし、ClubhouseやSpoonといった音声SNSは、それぞれの趣味や聴取形態に応じて参加しやすいのが人気です。さらに、SpotifyやApple Music、Amazon Musicなどの音楽ストリーミングサービスは、スマホやPCとオーディオ機器との接続によって、いつでもどこでも音楽を楽しめます。

音声メディアの代表といえば約100年の歴史を持つラジオ放送ですが、このラジオも今や多様化しました。送り手の形態も、AM、FMの既存の放送局に加えごく狭いエリアに電波を流すミニFM局が各地で次々と認可を受けています。テレビとネットに押され一時衰退の一途を辿っていましたが、その救世主となったのが「radiko」の登場です。スマホで手軽にラジオ放送が聴けるだけでなく、遡って番組を選べる「タイムフリー機能」、全国各地の放送が聴ける「エリアフリー機能」など使いやすい機能が行き届いています。テレビもそうですが、「メディア」という言葉がコンテンツを流すための「中間」という意味から解き放たれて、むしろそこに流すコンテンツの種類に紐づいて使われるようになってきました。高額なインフラによって電波を発信し成立していたラジオ放送は、今や基本的には無料で使えるネット回線経由で受信する人の数が電波で聴く人を上回りつつあるのです。インターネットでのみ発信するインターネットラジオ局も世界中で名乗りをあげています。またまた英語の話で恐縮ですが、「radio」という英単語の直接の和訳、「無線」という意味で今の「ラジオ」を定義するのは不自然なのかもしれません。

とにもかくにも、インターネットとスマホの登場で、「音声メディア」の形態も多種多様化し、ユーザーの楽しみ方も選択肢が広がったわけです。

「見えない」、つまり「見られない」ことの妙

このように多様化した音声メディアですが、その本質的な特徴は普遍的に感じます。人間の感覚の中で最も多くの情報を認識できるのは視覚。出版物や屋外看板、テレビ、インターネットとほとんどのメディアは最終的に人の視覚に訴求可能なのに対し、音声メディアはその貴重な視覚情報を伴わないほぼ唯一のメディアと言ってよいでしょう。これはハンディではありますが、音声メディアの存在意義はまさにこのハンディを逆手にとってメリットとしていることで生まれているのです。
一番よく言われるメリットは「ながら聴取」が可能なことでしょう。車の運転をしながら、勉強や仕事をしながら、電車に乗りながら楽しめる。最近社会問題にもなっているスマホ歩行も、音を聴くだけなら危険も少なくて済みます。「ながら聴取」はラジオのメディア特性として昔から謳われてきた代表的な独自性ですが、スマホの登場によって「ながら聴取を楽しむ」生活シーンはさらに広がりました。

この物理的な特性に加え、音声メディアの強みとして、「音声だけ」であるが故の心理効果、エモーショナルな働きも忘れることはできません。テレビの画像に登場するタレントたちは、視聴者側からすると「別世界の人」「向こう側の人」と感じませんか。プロの撮影スタッフが演出する「舞台の上」の世界。仮にそこに描かれているのが日常を舞台にしたドラマだとしても、なぜか自分の生活環境とは違う、手の届かない出来事に感じてしまう。「あんな高級マンション、住めないよね」とか、「寝起きであんなきれいでいられないよね」とか。これ、つまりドラマの中のビジュアル情報がなせる業、といえませんか?対してラジオは、パーソナリティの一流タレントがとても「普段着」のトークをするのが魅力です。発信者のタレントも、受信者のリスナーも、相手が「見えない」、相手に「見られない」ことでつい心を許してホンネで語ってしまう「懺悔室効果」が生まれています。特に深夜放送。イケメンタレントが、飲み屋にいるかのようなカジュアルな口調で下世話なことを話すと、「なんだ、彼も人の子だな」みたいな共有意識が生まれ、リスナーの方の気持ちも引き込まれます。相手が見えないからこそ、動画メディアにはない「ホンネへの共感」が成立しているのではないでしょうか。

「共感」という単語は、今やマーケティングでもよく耳にします。消費者との間に共感を作ることで売りたい商品・サービスや企業そのものの「ファン」を形成し、売り上げ向上に結び付ける手法は「共感マーケティング」と呼ばれています。消費者との共感には、例えば「地球温暖化」「フェアトレード」「食育」といった社会課題に対して企業が取り組んだり、若者に人気のあるタレントやスポーツ選手をスポンサードしたりするなど、直接に商品と関係ない企業活動も含まれます。大量生産・大量消費を前提としたマーケティングに対し、「共感マーケティング」はかなりパーソナライズされた、しかも深層心理にも関わるような消費者の「ホンネ」分析で成り立つことになるのですが、そういう「共感のためのメッセージ発信」にラジオなど音声メディアは向いていると言えそうです。

【Tips】「視覚情報」を伴わないことが、かえってリスナーとの共感を生む

広告として活かす!音声メディアのクリエイティブ的「得意技」

得意技①:想像力をかきたてる

音声メディアの「音声だけ」だからこその特性とメリットについて説明してきました。ここからは、このユニークな音声メディアの特徴を活かした広告、オーディオCMの「得意技」を説明します。

最初のキーワードは、「想像力」です。

前述の通り、ビジュアル情報を伴わないということは、広告としてはかなりのディメリットに見えます。例えば、「シズルカット」。広告制作の現場では食べ物のおいしそうなカットだけでなく、車が走るさま、衣服の肌触りが滑らかなさま、などにまで使われることがありますが、これらを音声だけで表現するのは直接的にはかなり難しいでしょう。

しかしこのディメリットを逆手に取ることで、かえって食べ物をおいしそうに感じさせることも可能です。「強火でローストしたアーモンドの香ばしさが、瞬く間に口いっぱいに広がり…」のようなモノローグ(ナレーションコピー)と同時にアーモンドが砕ける「カリッ!」という効果音が入れば、もしかするとその様子を撮影して動画で見せるよりおいしく感じられるかもしれません。音だけの方が、情報がファジイである分、受け手にとってそのおいしさを勝手に想像できる。情報の限定感が少ないので、リスナーは「自分に都合のいい味わい」を勝手に思い浮かべることができる。つまりこのアーモンドは、それぞれのリスナーにとって「おいしい」と認識される可能性が高いわけです。

人は得られた情報の足りないところを想像力で補います。暗闇の茂みから「ガサガサッ」と音がしたら、人によっては地球上に存在しないようなおどろおどろしい怪物を脳内のスクリーンで見ることができるのです。本当は風でそよいだ雑草の音だとしても。想像力は、偉大です。

得意技②:垣根を下げる

次のキーワードは「垣根の低さ」です。
テレビやネット動画で描かれる世界は「舞台の上の世界」に見えるのに対し、ラジオのワイド番組などはリスナーとの距離がとても近く感じられる「茶の間の世界」です。この身近さが「音声のみ」メディアの強みでもある、とは前述の通りです。ラジオについて言えば、テレビよりも生放送の時間が長く、しかも番組の自由度が高いので、出演者のアドリブが出やすく普段着の会話を楽しめます。またリスナーからの投書や電話など一般人の参加機会も多く、それがラジオ全体の「垣根の低さ」につながっているのでしょう。

CMと本番組との間の「垣根」も低いのが特徴です。ほとんどの動画CMは時間的にも表現的にも本番組とは明確に区別されていて、視聴者から見ても容易にわかります。ラジオCMも基本的には番組との区別はつけますが、音声だけで表現される分、その差は動画CMほどには感じられません。あるラジオ生放送のパーソナリティのタレントが、CM枠で流れた求人サイトのラジオCMの音楽を気に入って、CMを受ける形で「愛してやまない」などと繰り返しコメントしていましたが、おかげでタレントのファンたちにもその音楽がすっかり定着しました。それもラジオの「垣根の低さ」がなせる業、です。ラジオ番組を通じてのパーソナリティとファンとの結びつきは強く、スポンサーにとっては思わぬマーケティング上の副産物ともなり得る一例、と言えます(もちろん常に期待できるわけではありませんが)。

得意技③:低予算のメリットを活かす

3つ目のキーワードは「低予算」です。テレビCMの放映料に比べラジオCMは安価です。加えて、ビジュアルを伴うメディアの広告は動画であれグラフィックであれ、撮影や作画などのビジュアル制作が伴い、それが広告制作費の大きな部分を占めることになりますが、オーディオCMで必要なのは「言葉(ナレーション)」「音楽」「効果音」の3種の音だけです。そのためオーディオCMの制作費はテレビCMやグラフィック広告に比べかなり割安です。

このメリットを活かす方策としては、まず複数素材を用意することがあります。同じキャンペーンで訴求ポイントやターゲット、地域によって使うCM素材を変えてみたり、流した後の反応を見て素材を変更したりすることも可能です。またラジオの場合、フリークエンシー(同じ広告に同一個人が一定期間内に接する平均回数)が比較的高い、つまり同じ番組・時間帯に聴取する割合が高いメディアとされているので、いわゆる「シリーズ広告」を作って次回作への期待感をあおるような表現施策も考えられます。さらに、例えば流通や飲食チェーンの場合、時期や季節に合わせきめ細やかに素材を使い分けたり、週替わりのキャンペーンを案内したり、という活かし方も廉価で可能です。
低予算である分、表現の自由度も高いといえます。ロケ撮影ならとんでもない費用と時間がかかる「秘境のシチュエーション」も、音だけなら町場のスタジオに行って数時間で作れます。なんなら海底でも宇宙でもどんと来い!です。また、声に個性のある有名俳優やタレントでも声だけの出演は割安に設定されているのが一般的です。一流キャストによる本格的なドラマも気軽に作れる、というわけです。


【Tips】「想像力」「低い垣根」「低予算」は、オーディオCM制作の3つのキーワード

まとめ

音声メディアが「音声だけ」であることのディメリットをメリットとして活かすヒントをご紹介しました。インターネットを経由して、あらゆる種類のビジュアルつき動画が溢れかえる今においても、「音声だけ」メディアが根強く支持されているのは、何か人体や人間心理のメカニズムそのものとも関わる根拠がありそうです。「音声だけ」であるメリットを最大限活かした、他のメディアではできないユニークで効果的な広告宣伝が、これからもっと生まれてくる予感がします。

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