デジタル令和時代のアナログトレンド

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デジタル令和時代のアナログトレンド

とどまることのないIT進化ともに、常に新たな世界に突き進む令和の時代。我々はいつでもどこでも最新版の情報にたどり着け、常に多くの人と気軽にコミュニケーションできる利便性を享受しています。一方で、目まぐるしい状況の変化を間断なくキャッチし、それに反応し続けていかねばならないという、一種の社会的な義務感が個々に存在しているのも事実。そんなデジタル時代、だんだん反作用のように、敢えて「アナログ」的なアクションを求める動きも目立ち始めています。今回はこの「トレンドに逆行する」新たなトレンド事象に注目し、その背後に裏打ちされた生活者心理も読み解いていこうと思います。


脱・デジタルなトレンドあれこれ

「デジタル・デトックス」がひとつのアクションに

SNSツールの進化と浸透で、友人や仕事の関係者、そして見知らぬ人々と、いつも気軽にやりとりができ、思ったことや活動の発信までもが普通にできるようになった現在。しかしその反面、「自分の発言に対する反応は大丈夫か」「即座に感じ良くリアクションをしなくては」など、常につながり続けるがゆえの気疲れも、現代人の深刻な悩みになっています。若年層にとっての「SNS疲れ」は、いまや当たり前化しています。

そしてこれは、「気にしなければいい」では克服できない、自分自身ではどうすることでもできない問題であり、何らかの外的な力で強制的にシャットアウトしてもらうことが時に必要になってきています。現在、「デジタル・デトックス」というキーワードが、何とかこの修羅場を乗り越えてくれる世の中的な助け舟となって、様々な手立てをもたらしています。

デジタル・デトックスの代表格としては、まず「体験ツアー」が挙がります。とにかく、デジタルを遠ざける行動のお膳立てをしてもらうということです。ツアーではまず、参加者一斉にデジタルデバイスを専用のケースに預けます。みんな一緒ということで、自分だけ世間から切り離されたわけではないから大丈夫だとして、何とか実行させるのです。そして、全員手ぶらで、大自然のなかで、ヨガや焚火、日本文化ワークショップなど、五感をフルに使ったウェルビーイングな時間を過ごします。さらには「講座」も様々用意されていて、普段の暮らしにおけるデジタルデバイスとの具体的な向き合い方も学べます。こうした取り組みは、個人のメンタルケアだけでなく、企業単位でも注目され、福利厚生として取り入れる会社も出てきています。学習の一環で「デジタルデトックス・アドバイザー」といった資格取得もチャレンジできます。

手に取って楽しむコンテンツ体験

ゲームなどの娯楽も、デジタル技術革新とともに目まぐるしい進化を遂げました。現在は、ウェアラブルデバイスを用いたVR(仮想現実)に没入しながら、オンラインで世界中の人と競いあうeスポーツが白熱しています。そんななか、まったく対極的アナログな流れとして「ボードゲーム」が人気急上昇。かつては海外製が主流でしたが、昨今では日本製が増え、さらには個人のお手製のものも目立っています。手作りする楽しさに加え、特に、リアルな対面の熱気を感じ取ることが最大の醍醐味とのこと。対戦相手の顔色や反応、現場の緊張感など、オンラインでは味わえない人間的な楽しさを存分に満喫することができます。

また、映像コンテンツの進化と裏腹に、大人の「絵本」トレンドも話題になっています。なかでも「しかけ絵本」は、その大胆な立体世界の創作性が、色彩感覚含めひとつのアート作品のようにインパクトに満ち溢れたものとして、多くの人を魅了しています。そして、ほっこりとするようなストーリーがもたらす「絵本セラピー」も見直されており、大人向けの絵本ミーティングも心と向き合う時間として人気になっています。また、おしゃれな絵本をインテリアのひとつとして飾って楽しむのも大人流。若者層のアナログレコードジャケット人気と同様に、カルチャー作品として手に取って「ありがたく所有する悦び」の発見も、デジタル隆盛時代ならではと言えるでしょう。

超絶リアルな手しごと描写

「スマホで写真を撮って共有」が日課と化した現在。見栄え良くデジタル修正するのも誰しもお手の物になりつつあります。そんななか、手作業で、写真と間違えるどころかまるで実物の「超絶リアルな」絵画や彫刻などのアート作品が、「本物にしか見えない○○」としてSNS中心に注目されています。

モチーフは、イチゴ、トースト、コップなど…日常生活でいつも目にする何の変哲もないもが多く、逆にそれが大きな驚きをもたらしてくれます。また、その信憑性を示すように制作するプロセスそのものも動画配信され、トリックなく手しごとで出来上がっていく面白さも共有することができます。目玉焼きの料理をしている動画そのままかと思いきや、実はすべて手書きで、そのプロセス自体も精緻に描写されているといったものまであります。SNSの普及=デジタル化ゆえの、新しいアナログ礼賛スタイルです。

【Tips】「デジタル慣れ感覚」を覆せれば、普通のものでも古いものでも、ありがたく、斬新


純・アナログワールドとしての「昭和」

昭和は、ネットのない驚きの世界

若年層のレトロコンテンツ発掘から沸き起こった昭和ブーム。YouTubeなどで様々な時代のサブカルチャーを発信するトレンドから始まり、最近ではテレビでも、世代横断で懐かしさと斬新さを共有するコンテンツとして定番化しつつあります。レトロな古い遊び場が注目されると、昭和に特化した遊園地まで新登場し、いまや昭和系のイベントは方々で数々行われています。そんななか、昭和のシンボリックなアイコンとなっているのが「黒電話」です。SNSもメールも携帯電話もないなかで、黒電話ひとつで、友情を深め、仕事もまかなっていたのが、若い世代には何よりも驚きであり、しかもそれは、そこまで遠い過去ではなく、ミドルシニア以上の世代には原体験としてあったということも、SNS疲れを感じる昨今では、どこか不思議で素敵な出来事でもあるわけです。黒電話のかけ方やコント動画がTikTokやYouTubeで人気になったり、レトロかわいいインテリア演出素材として、中古品がフリマアプリ出品やネット通販で増えたり、また黒電話デザインのチャームやクッションなど小物も様々に展開され、黒電話型のミニ扇風機まで登場するほどです。

ビッグスターは、永遠の癒し

音楽、ファッション、レジャー…常に目まぐるしい流行の移り変わりのなかで、自分らしいものを選び取っていく時代。自分の好みがデジタル上で把握されカスタマイズが進んだ分、ブームも多様化して、それぞれが小粒になっています。一方で、アナログな昭和時代は、マスメディアの求心力にひきこまれるようにビッグトレンドへの追随が世の常でした。でありながら、誰もが実力に納得する「ビッグスター」も生まれました。特に歌謡の世界は、大人数グループが目立つ現在と対極的に、一人で世界観を築き上げるアイドル自身の個性が光り、そのカリスマ性は現在の若者をも魅了し始めています。

スイーツやカフェなども同様です。常におしゃれな新しモノが続々出現し、それを次から次へとトライして発信までしていかなければいけない現在、そうした流れをものともしない不動の王道ビッグアイテムも求められています。#クリームソーダ、#ナポリタン、#純喫茶といった昭和のド定番は、進化が止まらない令和の日常において、まるで頼れる止まり木のような欠かせない存在になっています。タピオカ、パンケーキがもう古いとなって、次は何を発信しようか迷ったとき、昭和モノなら、レトロ枠ということで、まず流行乗り遅れストレスがなく、珍しさをネタに、気ままに面白く扱える良さがあります。

しかしなんといっても、モノが限定的だった古き良き時代の人気商品は、殿堂入りの堂々たる風格があり、多くが古びて朽ち果てていく現代の虚しさを吹き飛ばすパワーがあります。日々のくらしで何気なく遭遇する昭和のあれこれは、実はデジタル現代人ならではの疲弊した心に瞬時に働きかけ、その都度癒しを与えてくれているのかもしれません。

【Tips】デジタル進化ストレスに「NO!」と「安心」をくれるのが、レトロの最大の魅力


まとめ

デジタルで世の中が便利になったとはいえ、それが加速化していくと、「ネットと少し距離を置いて心を癒したい」「リアルな対話で手ごたえを感じたい」など、自然にアナログを求める動きが顕在化していくようです。それは、気持ち的に救われたいだけでなく、生きる上での大切なベースがアナログにあることを、改めて取り戻そうという動きなのかもしれません。直近のトレンドとして「お金の見える化教育」や「片手でめくれる単語カード」「姿勢を矯正してくれるペン」などが注目されていますが、まさにその兆しを物語っているといえます。買い物や筆記が、完全に電子マネーやキーボード文書だけになってしまうと、実際にお札で払ったり文字をつづったりすることで身を以て培われる、金銭感覚や思考力がおろそかになっていく危惧が否めませんから。

アナログは、もはや古いものでなく、デジタルで人間がスポイルされないための、生きるうえで最も基本的な能力を養う、先手で取り入れるべきものとして、今後様々なかたちでますます見直されていくでしょう。

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