ビデオリサーチが毎週公表している「週間高視聴率番組10」というデータがあります。「報道」「ドラマ」などのジャンルごとに視聴率上位10番組が提示されているのですが、末尾に記された(注)のなかに、以下の文言があります。
・放送分数15分未満の番組は除いております。
つまり、15分未満の番組は、たとえ視聴率が高いものがあっても、明らかにはされていないということになります。実際、ゴールデンタイムの高視聴率番組に挟まれた短い番組がなかなかの高視聴率を獲得することがあります。15分未満の短時間番組をミニ番組ないしミニ枠と呼んでいますが、こうした表に出ない高視聴率番組が潜んでいるだけでなく、様々な特長を持っています。テレビCMの出稿を検討する際に、スポットや相乗り型のタイム提供だけでなく、”ミニ番組の提供”も条件によっては有力な選択肢になりうると考え、ご説明いたします。
「ミニ番組(=ミニ枠)」とは
ミニ番組について、日本民間放送連盟(民放連)やNHKに明確な規定はありません。一般的には、先述のように、ビデオリサーチの視聴率速報に記載されない15分未満の番組であることが前提になります(ちなみにNHKの連続テレビ小説が放送分数15分です)。多くの場合、30分や60分番組の合間の時間帯で放送される番組が想定されています。60分番組といいつつ実際は54分の番組の後に放映されている6分番組を思い起こしていただけるとわかりやすいと思います。
【Tips】ミニ番組は、視聴率速報に載らない15分未満の番組
「ミニ番組(=ミニ枠)」といえば
代表的なミニ番組といえば、断然「キユーピー3分クッキング」(NTV・CBC)「くいしん坊!万才」(フジテレビ)「世界の車窓から」(テレビ朝日)の3番組が挙がるでしょう。いずれも長い歴史と高い知名度を持った、名物番組です。
「世界の車窓から」(月・火23時10分~15分)は、”世界各地の鉄道をめぐり、車窓からの美しい光景や各地での名所等をご紹介”(富士通Webサイト)する番組で、放送開始は1987年6月です。
「キユーピー3分クッキング」(月~土11時45分~55分/月~金11時20分~11時30分・土11時30分~40分)は、”放送開始以来一貫して「簡単、便利、毎日の献立づくりに役立つ」レシピを紹介し続けている”(キユーピーWebサイト)番組です。1963年1月放送開始ですから、実に60年を超える長寿番組です。
これらの番組に共通して言えることは、「番組テーマがシンプルで一貫している」「番組名とクライアントがしっかりと結びついている」「番組を想起させる強いシンボルがある」ということかと思います。3点目について補足しますと、「世界の車窓から」で言えば、溝口肇によるチェロのテーマ曲と放送開始以来変わらない石丸謙二郎のナレーション、「くいしん坊!万才」ならば冒頭の短いテーマ曲とアニメーションがそれです。「キユーピー3分クッキング」では女性による番組タイトル読み上げとそれに続くテーマ曲が定着しています。テーマ曲はもともと「おもちゃの兵隊のマーチ」(レオン・イェッセル作曲)というクラシック曲ですが、ユニークなアレンジによって独自性を獲得しています。こうしてみると、特にサウンド要素が強い効果を上げていると言えそうです。
【Tips】長寿ミニ番組、共通点は「シンプルなテーマ」「広告主の認知」「音と画像のアイコン」
「ミニ番組」の利点
クライアントにカスタマイズした番組制作ができる
ミニ番組の利点としてまず挙げられるのは、クライアントが伝えたい内容を反映させた番組を新たに創出することができるという点です。通常のタイム提供では、出稿対象となるのは、既に放送されている番組や放送局が予め企画している番組ですので、いわば”ありものに乗っかる”かたちになります。対してミニ番組は多くが1社のみで番組提供していることもあり、提供クライアントにカスタマイズした新たな番組を制作することも少なくなく、CMの時間帯だけでなく番組からもクライアントからのメッセージ発信が可能です。もちろん、通常の1社提供番組でもある程度は可能ですが、ミニ番組の方がはるかに安価で実施できます。
放送時間に対するCM量の割合が高い
番組内で放送できるCMの時間については、民放連の放送基準に上限の規定があります。それによると、プライムタイム(各放送局の定める午後6時から午後11時までの間の連続した3時間半)におけるコマーシャルの時間量は、下記の通りとなっています。
05分以内の番組 1分
10分以内の番組 2分
20分以内の番組 2分30秒
30分以内の番組 3分
30分以上の番組については、原則放送時間の1割が上限となりますが、30分未満の番組については割合が上がり、10分以内の番組については放送時間の2割になっています。仮に30分番組を1社提供する場合、CM量は3分以内ですが10分のミニ番組を3回放送すると、CM量の合計は倍の6分(2分×3回)以内となります。ある意味お得な放送時間だと言えます。
前後の番組からの流れ視聴により、効率的に視聴者を獲得できる
先述のように、ミニ番組にはプライムタイムに放送される30分ないし60分番組の間に放送されるものも多くあります。前番組からの流れ視聴や次番組への待機視聴が、─前後に高視聴率番組がある場合は特に─期待できます。
ワンテーマがコンパクトに凝縮されていて、視聴者の印象に残りやすい
ミニ番組の多くは先に挙げた3番組のような、ワンテーマで簡潔な情報発信となります。このため、バラエティ番組やドラマの合間に視聴する場合などは特によいコントラストとなって、短い放送時間でも認知されやすいと考えられています。“山椒は小粒でぴりりと辛い”的な魅力だと思います。
さらにそのテーマとクライアントのイメージや業務との間に高い親和性を持たせることによって番組とクライアントとの連想は強化されます。
【Tips】短時間の1社提供番組であることによる様々な強み
「ミニ番組」の始め方
プライムタイムに1社提供番組を持つのは容易ではありません。プライムタイムの番組は多くがネット番組(複数のエリアで放送される番組)であるため、媒体料が高額になります。ただ、ミニ番組に関してはこの限りではなく、ひとつの放送局だけで制作、放送ということも可能です。
つまり、地方局でスタートさせることにより、制作費・媒体料を抑えながらミニ番組を持つことができるわけです。まずはエリア対策として─長期的に注力したいエリアについて、地元の放送局と連携してミニ番組を制作・放送することによって地域での存在感が高まることが期待できます。さらに番組の評判を見ながら、放送地域を拡大していくという方法も取れます。最初から大きなバジェットを投入せず、スモールスタートが切れるというのがミニ番組の隠れたメリットです。
【Tips】大きなバジェットがなくても、スモールスタートが可能
まとめ
ミニ番組は区分上はタイム出稿(番組提供でのスポンサード)とみなされますが、1社提供、短時間番組という条件によって、通常のタイム提供とは異なる特性を持っています。ブランド強化につながるような番組を企画・制作することで、長期的なブランド資産の形成が図れます。さらにエリア対策として活用するなど、意外に使い勝手はよいと考えます。もちろん、ミニ番組はCMではなく、あくまで放送局が主体となって企画制作する「番組」ですので、内容が全てクライアントの思い通りにはなる訳ではありませんが、テレビ広告出稿をご検討の際、選択肢の一つとしてお勧めいたします。